パターン剥離とは?
修理業として日々ジャンク品を購入していると、とてつもないジャンク品に遭遇することがあります。
それがこちらです。
M92T36のランドが完全に剥げています…。いわゆるパターン剥離というやつです。どうやったらこんなことになるのか…。おそらく熱量が足りない状態で無理やりICチップを取り外したんだとは思いますが。
さてさて諦めるのは簡単ですが…。各種精密検査の結果、この基板は、この部分以外に不具合はなさそうです。今日はこんな状態になってしまった基板を修復する方法を解説します!
これを読むことで次のことを理解できます。
・パターン剥離した基板の修復方法がわかる
・修理に適した線材がわかる
それではいってみましょう!
修理に必要な道具とは?
パターン剥離に必要な修理道具は次の通りです。
道具名 | 写真 | 用途 |
---|---|---|
ヒートガン | メインの修理道具。高温で温めることで、ICチップの取り付けを行う用途に使用する | |
温調ハンダごて | 今回の修理では、線材をつなぎ合わせる際に使用する。 | |
液体フレックス | 液体フレックス。常温では粘り気があるため利用しやすい。ハンダを溶かしやすくする用途で利用する。 | |
ピンセット | 先曲がりピンセット。ICチップをつまんで持ち上げる際には必須。ゴムなどを巻いて防熱しても良い。 | |
Y字&プラスドライバ | ドライバ。本体を分解する際に使用する。 | |
顕微鏡 | ミリ単位の作業になるため、顕微鏡は必須。写真は双眼顕微鏡。 | |
デザインカッター | 主に基板上の保護膜を剥がす目的で使用する | |
線材 | 銅線のこと。写真は0.1mmの太いもの |
非常に根気がいる作業になりますので、何より諦めない心が大事です!
修理のやり方や注意点は?
修理方法としては、なんとか銅線で剥がれた線をつないでいくしかありません。
まずはつなぐ先の銅線部分をデザインナイフで削って露出させます。
次に、こんな感じで、はがれたパターン部分に銅線を這わせまたうえで、はんだ付けします。
これであとはICチップをいつも通り、リフローして完成!ではなく・・・。
実はこの画像、失敗しています。
パターン剥離修理に使用するおすすめの線材とは?
上記の写真では、線材が太すぎます。
結局この上にICチップが載ることになるため、太いとすき間ができてしまい、他のランドと接続できなくなります。
何度も何度も試してみましたが、どうしてもうまくいきません。
そこで、別の線材を試してみました。
- 0.06mm
-
先ほどよりましですが、まだ太いです。
どうしてもうまく接続できません。
- 0.02mm スマホ修理用の線材
-
明らかに細すぎです。1本2本つなぐのであれば、この細さでも対応できますが…。
今回は1mmもない感覚で、8本も作業しなければならず、神業的な手先の器用さを要求されるでしょう。
早々に諦めました。
これ以上の線材は手持ちがなく、途方に暮れておりましたが突然ひらめきました。
それがこちら
皆さんお持ちのハンダ吸い取り線です。
ハンダ吸い取り線は銅線を三つ編みのように編んで作られています。
これを裂いていくいくと、1本がちょうど髪の毛以下のサイズになります。
これが最高でした!
はんだのノリは良いし、適度に柔らかくて曲げやすい。そして何より大量に手に入る。
吸い取り線を線材にしてから、この手の作業で失敗することは無くなりました。
適切な線材の手持ちがなければ、ハンダ吸い取り線を裂いて使用してみましょう!
線材の長さは?
線材は確保したものの、次に失敗したのが、線材の長さです。
上記を見ると、明らかに元のランドより中央に線材が飛び出しています。
この状態でICチップをつけなおしても、中央のグランド部分にICが接触してしまい、ショートを引き起こします。
最悪ICチップが一瞬で壊れるので、この長さは特に気を付けて、元の長さを超えないように注意する必要があります。
修理完了時の写真
さて、上記のように失敗すること5、6回。ようやく修復することができました。
それがこちらの状態です。
はんだブリッジもなんどもやってしまったため、とても時間がかかりましたが、最終的に元通り繋ぎなおすことができました。
M92T36の詳細な交換手順については、下記の当ブログ記事をご参照頂けると幸いです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
自分も初めての経験でとても時間がかかってしまいました。
修復のポイントをまとめると次の通りです。
・線材には、ハンダ吸い取り線を細かく裂いたものがオススメ。
・つなげる線の長さに十分に注意する。
・失敗しても、何度も挑戦してみる。
あまりこのような故障に遭遇することは少ないかもしれません。
もし、修理に失敗してパターン剥離を起こしてしまった際などには、こちらの方法で修復を試みてください!